次世代B2Bレベニュー戦略バイブル

このリード、なんで営業に回ってきたんですか?

「営業に渡せる」と「営業が追える」の違い

「このリード、なんで営業に回ってきたんですか?」

営業への引き渡しを見直していると、こういう言葉がよく出てきます。

リードの量と質の問題。

前回は、営業と会う前から、買い手が一人で調べている時間を見ました。

今回は、その続き。調べた買い手が候補を絞り込む段階と、その先で営業に渡る場面の話です。

マーケティングは、決めた基準でちゃんと渡している。

でも営業からすると、「なんでこの人が今、自分のところに来たんだろう?」が分からない。

どっちも間違ってないんです。

なのに、同じリストを見ながら、全然違う話をしてしまう。

この「マーケティングから営業へ渡す境目」。

連載の第1回で、売上は部門の中ではなく境目で失われる、と書きました。

取りこぼしが起きる場所を、6つの境目に切りました。

今回はその最初の境目です。

まず、専門用語だけ簡単に整理します。

マーケティングが「営業に渡していい」と判断したリードがMQL。

その中から、営業が「商談として追う」と判断したリードがSQL。

MQLのうち、どれくらいSQLになったかを見るのが、MQL→SQL転換率です。ざっくり言うと商談化率で、これをどう定義するかは会社によって違います。

2年前、IT系のバックオフィス向けSaaS企業、約200名の会社でこの引き渡しを4ヶ月かけて組み直しました。

当時、組み直す前ですが予算の関係もありウェビナーや広告などを積極的にやっていた時期で、リード自体は増えていました。月に数百件です。

自ずと営業に渡るリードも増えるんですが、営業は「正直、リードの質が低くて…」と苦虫を噛み潰した顔。

一方でマーケティングは、「こんなにリードを渡しているのに、なんで商談にならないんだろう?おや〜?」となっていました。

マーケ施策がひと段落した段階で、スコアリングをしようという計画だったので、これに合わせて組み直しました。

結果、「商談化できそうなリード」がかなり増えたんです。

MQLを増やさずに、商談への転換率が20%上がり、商談の件数も増えました。

営業が「商談として追いたい」と判断する割合が上がったんです。

これはあくまで転換率の数字で、商談件数や売上が20%増えたという意味ではないのですが、それにつながる道を選択してくれるお客様が増えたということ。

大事ですよね。

私がこの案件で「変わったな」と感じたのは、実は数字以上に、みんなの会話でした。

それまで出ていた「リードの質が悪い」という話が消えて、「じゃあ、どのスコア帯の転換率を上げる?」という話になった。

抽象的でマイナスな言葉から、具体的な改善を話すようになった。

かなり大きな変化ですよね。

また、この案件で改めて分かったのは、「営業に渡せる状態」と「営業が次の行動を決められる状態」は同じじゃないということでした。

買い手も比較している

年間契約金額300万円以上のBtoB購買に関わった307名への調査では、営業と初めて本格的にやり取りした時点で「候補はまだ挙がっていなかった」は2.3%、「1社」は8.8%でした[※1]。

最終的に発注した(または発注予定の)企業を候補に加えた時点で影響が大きかった要因は「自社と似た規模の企業の事例があった」が44.3%、「自社の課題に対応する機能が明確だった」が40.3%と上位に挙がりました(n=298、上位3つまで)[※1]。

この調査はあくまで買い手の行動を調べたもので、渡し方の正解を示すものではありません。

営業の連絡を待たずに、比べ始めているお客様(買い手)もいます。自分で調べて情報収集して、アイミツ取って、この段階で社内にジャブ打ってみたり。色々してるんですよね。

そこへ営業が連絡するのですから、営業には「なぜ今、この人なのか」を判断できる材料が要ります。

私が見てきた範囲では、MQLの条件には役職・業種・資料ダウンロード・ページ閲覧数がよく使われています。

どれも「売り手にとって良さそうな相手か」を測る項目です。

けれど営業が知りたいのは、「なぜ今、この人なのか」。ここが条件のどこにも入っていないと、渡された側は動きにくくなります。

リードの質を上げるためにやったこと

最初にやったのは、実はスコア設計を作ることではありませんでした。スコアリングの前段階です。

まず、狙う顧客像(ICP)を定義し直しました。そのうえで、HubSpot上で「どの行動が受注に近いのか」を解析しました。その結果を、行動スコアリングにしています。

そのほかに変えたのは、主に次の3つです。

顧客の検討フェーズに合わせて、情報を届けるシナリオ(ナーチャリング)を作った

スコアが一定の基準に達した時点で、必要な情報と一緒に、営業へ自動で通知が届くようにした

マーケティングと営業が、共通の物差しでリードを見るようにした

※細かく変えた部分はさらにあったのですが、その会社固有のものだったので、汎用的なものを抽出しています。

大事なのは施策の数より、「何をもって、今この人を営業が追うのか」をマーケティングと営業の間で揃えたことです。

少しだけ経営側の話

この案件の話ではなく一般的な話なんですが、渡す条件を厳しくすると、MQLの数は下がることがあります。

そのとき、マーケティングを「MQLの数」だけで評価していたら、担当者には条件を厳しくする理由がありません。

担当者の能力ではなく、評価の設計が、行動を決めてしまう。

いま、マーケティングは何の数字で評価されていますか?

今週、1件だけ開いてみてください

前回は、直近に公開したコンテンツを3本選んでもらいました。

今回は、こちらです。

直近に営業へ渡したリードを1件、営業担当者と一緒に開いてください。

そして、その場で1つだけ聞いてみてください。

「この画面だけ見て、この人に今日、何を話しますか?」

答えが出なければ、情報はあっても、次の行動を決める材料にはなっていません。

追わなかったリードがあれば、その理由を、次の4つに分けてみてください。

① 顧客像が違う:そもそも対象企業ではない

② 時期が早い:まだ買う段階ではない

③ 関心が浅い:関心はあるが、営業が追うほどではない

④ 伝わっていない:追う理由が、営業に伝わっていない

①が多ければ、狙う顧客像を見直す。

②が多ければ、渡す時期や、そのあとの育て方を見直す。

③が多ければ、MQLの条件を見直す。

④が多ければ、営業への引き渡しを見直す。

同じ「商談にならなかった」でも、直す場所は違います。

あとから集計できるように、営業がリードを戻すときの理由を、選択式にしておくのも一案です。

「うちは②だ」「いや④だな」「そもそも理由を記録していない」。理由を記録していないなら、それが最初の発見です。

次回は商談・確定

営業が追うべき相手が決まれば、次はいよいよ商談です。

日本のBtoB購買では、ここからもう一人の登場人物が増えます。目の前の担当者ではなく、その人の社内です。

同じ調査では、発注までの承認・稟議が「2段階」だった人が60.9%でした[※1]。

海外で広く使われているWinning by Designの「Bowtie」は、実稼働の8工程で売上プロセスを見ます。

私が確認した範囲では、その8工程のどこにも、買い手の社内で承認を通す時間を置く場所がありません。

次回は、そこから始めます。


この案件をやっていて考えたのは、CRM(顧客管理システム)に情報を残すだけでは足りない、ということでした。

営業が「なぜ今、この人なのか」を判断して、次の行動を決められるところまでつなぐ必要がある。

この案件で使ったのはHubSpotです。

最近リリースした自社CRM/SFA(顧客管理・営業支援システム)とは別の話ですし、今のツールを替えてください、という話でもありません。

ただ、40社以上の導入支援に関わるなかで見えてきた「動くCRMの型」を、まだCRMを持っていない会社の最初の1つとして製品にしたのがRevenue CRMです。

顧客情報をこれから一つにつなぐところなら、見てみてください。

Revenue CRM


出典:
※1 株式会社IDEATECH「日本のBtoB大型購買プロセスに関する実態調査」(デマジェン総研 北川裕康氏との共同調査)。調査ページ:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000629.000045863.html 調査期間:2026年3月23日〜26日。対象:直近12か月以内に年間契約金額300万円以上のBtoB商材の導入・見直し・乗り換え・大型契約更新に2名以上で関与した、BtoB企業の会社員・経営者307名。候補企業の数・承認段階はn=307。候補に加えた時点の要因は、最終的に発注した(または発注予定の)企業について聞いた設問。n=298、上位3つまで回答。調査結果の解釈は筆者によるものです。

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