日本でRevOpsという言葉が本格的に使われ始めたのは、2022〜2023年ごろからです。2023年に実施された国内調査でも、RevOpsの認知度はまだ1割程度にとどまっており、マーケティング・営業・カスタマーサクセスを横断した取り組みを行っている企業も全体の17.5%でした。
つまり、RevOpsは日本企業にとってまだ新しい概念です。
ただし、定着しにくい理由は「新しいから」だけではありません。海外で生まれた概念を、日本の商習慣や組織構造にそのまま当てはめようとすると、どうしてもズレが生まれます。営業とマーケティングの役割分担、顧客との関係づくり、意思決定の進め方、部門間の責任範囲が、米国のSaaS企業とは違うからです。
そのため、日本企業でRevOpsを始めるときは、まず「RevOps部門を作るかどうか」よりも、「収益につながる活動を、部門をまたいでどうつなぐか」を決める必要があります。
専任人材がいないことも、もちろん課題の一つです。ですが、原因はもっとシンプルなこともあります。多くの場合、マーケティング、営業、カスタマーサクセス、プロダクトのあいだで「何を収益につながる活動と見るか」が揃っていません。
ある新規AIプロダクト事業では、国内のマーケティング担当は3名だけでした。しかも全員が他業務との兼務。開発は海外チーム、CRMは未整備、プロダクト利用データとマーケティング施策もつながっていませんでした。
会議では「まずリードを増やそう」「営業に渡せる状態を作ろう」「プロダクト利用状況も見たい」という話が同時に出ます。しかし、誰をターゲットにするのか、どの行動を有望シグナルと見るのか、どの時点で営業に渡すのかが決まっていないため、施策を増やすほど運用が複雑になっていきました。
この状態でRevOps担当を採用しても、おそらく最初に任されるのはHubSpotの設定、レポート作成、データ整理です。もちろんそれも必要です。ただし、それだけではRevOpsにはなりません。
RevOpsは「CRMをきれいに管理する人」ではなく、リード獲得から商談化、受注、継続までの流れを同じ定義でつなぐ運用です。少人数の組織ほど、専任部署を作るより先に、収益の流れをどこで切らさないかを決める必要があります。
RevOpsがツール管理で止まってしまう理由
RevOpsという言葉を導入すると、最初に起きやすいのが「では誰がHubSpotを見るのか」「Salesforceの項目設計を誰が持つのか」という話です。
もちろん、CRMやMAの管理者は必要です。ワークフローを整え、レポートを作り、データをきれいに保つ人がいなければ、収益の流れはすぐに見えなくなります。
ただし、それだけではRevOpsにはなりません。
RevOpsで本当に見るべきなのは、ツールの中身ではなく、部門をまたいだ収益の流れです。
たとえば、マーケティングが「資料請求」をリードとして扱い、営業が「具体的な導入時期があるもの」だけを有効リードとして見ている場合、同じリードという言葉を使っていても、実際には別のものを見ています。
この状態でHubSpotのリストを整えても、営業に渡るリードの質は安定しません。ダッシュボードを作っても、「マーケティングでは成果が出ているが、営業では商談が増えていない」という会話が続きます。
ツール管理が悪いわけではありません。問題は、ツールより前に決めるべき定義が決まっていないことです。
日本企業でRevOpsがズレやすい3つのポイント
- 営業とマーケティングの境界が曖昧なまま進む
日本企業では、営業がリード獲得から商談化、既存顧客対応まで広く担っていることが少なくありません。そのため、マーケティングがどこまで責任を持ち、営業がどの状態から引き受けるのかが曖昧になりやすいです。
RevOpsを始めるなら、最初に決めるべきなのは「誰が何をするか」ではなく、「どの状態になったら次の部門に渡すか」です。資料請求があっただけで営業に渡すのか。価格ページを複数回見たら渡すのか。特定の業種・規模に該当する場合だけ優先するのか。この基準が曖昧なままだと、リード数は増えても商談化率は安定しません。
- 部門ごとのKPIがつながっていない
マーケティングはリード数、営業は受注金額、CSは継続率を見る。どれも重要な指標ですが、それぞれが独立していると、収益全体の流れは見えません。
RevOpsでは、部門ごとのKPIをなくす必要はありません。むしろ必要です。ただし、それらが一つの流れとしてつながっている必要があります。リード数が増えた結果、SQLは増えたのか。SQLが増えた結果、商談は増えたのか。商談が増えた結果、受注単価や継続率はどう変わったのか。この接続がないと、各部門は頑張っているのに、経営から見ると「結局、何が売上に効いたのか分からない」状態になります。
- 少人数組織ほど、RevOpsが後回しになる
少人数の組織では、目の前の施策が優先されます。展示会、広告、LP、メール配信、営業資料、商談対応。どれも急ぎです。
その一方で、定義づくりやデータ設計は後回しになりがちです。すぐに成果が出るように見えないからです。しかし、少人数だからこそ、RevOpsは早めに必要になります。人数が少ない組織では、手作業や属人的な判断が増えるほど、すぐに運用が詰まります。
少人数組織でRevOpsを始めるなら、最初にやること
最初にやるべきことは、ツールを増やすことではありません。既存のCRMやスプレッドシートを見ながら、次の3つを決めることです。
- 有望リードの定義を決める
どの行動、属性、課題感があれば営業が動くべきなのかを決めます。資料請求、セミナー参加、価格ページ閲覧、導入時期、企業規模など、営業が判断に使える条件に落とし込みます。
- 商談化の条件を明文化する
営業が「これは商談」と判断する基準を明文化します。担当者の感覚ではなく、チームで同じ判断ができる状態にします。
- 受注後の接続を決める
受注した顧客が、どの条件を満たせば継続・アップセルの対象になるのかを決めます。RevOpsは受注で終わるものではなく、継続収益まで含めて見る運用だからです。
この3つが揃うと、RevOpsは急に現実的になります。HubSpotやSalesforceの設定も、単なる項目整理ではなく、収益の流れを支える設計になります。
まとめ:RevOpsは大企業だけのものではない
RevOpsは、専任部署や大きな組織だけのものではありません。むしろ、少人数でマーケティング、営業、プロダクト、CSをつなげなければならない組織ほど、早い段階で必要になります。
日本企業でRevOpsが定着しにくいのは、概念が難しいからではありません。海外のやり方をそのまま持ち込み、「部門」や「役職」から始めようとするためです。
最初に必要なのは、RevOps担当者を置くことではなく、収益につながる活動の定義をそろえることです。
リードとは何か。商談とは何か。良い顧客とは何か。どの行動が収益につながる兆しなのか。この問いを部門横断で揃えたとき、RevOpsは単なる流行語ではなく、少人数でも収益を伸ばすための運用になります。
少人数でも回るRevOpsの土台をつくる
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