急成長フェーズの医療テック企業(従業員約150名)では、顧客情報が国内DB・kintone・Excelなど10箇所以上に分散していました。データ統合プロジェクトを始めた当初、チームは「ツールをつなぐこと」をゴールに据えていました。しかし実際に必要だったのはツールの接続ではなく、「誰がどんなデータをいつどこで必要とするか」という設計でした。

6ヶ月のプロジェクトを経て、データ管理・抽出業務を約65%削減し、マーケティングチーム全体で月約100時間の工数を創出しました。チームはオペレーション中心の業務から戦略実行へ移行しています。ツールを増やしたのではなく、データフローと運用構造を再設計したことで変わりました。

あなたの組織は大丈夫か——5つの確認項目

  1. 複数システムに同じ顧客情報が存在し、どれが最新か分からない

    Salesforce・HubSpot・kintone・Excelのそれぞれに「顧客情報」があり、会議のたびにどれが正しいかを確認していませんか。

  2. データ抽出のたびに特定の担当者に依頼する必要がある

    「最新リストを作れるのは〇〇さんだけ」という状態が続いているなら、データ構造が特定個人に依存しています。

  3. CRM統合プロジェクトの要件が肥大化して収束しない

    各部門から「あの機能も欲しい」「このデータも連携したい」が集まり、プロジェクトのスコープが広がり続けていませんか。

  4. 統合後も手作業の補正やExcel集計が残っている

    システムをつないだはずなのに、会議の前にはExcelで手動集計が発生している場合、データフローが設計されていません。

  5. 「どこが正データか」が部門によって違う

    営業は自分のkintoneを信頼し、マーケはHubSpotを参照し、経営はExcelを使っている——この状態ではつないでもズレが続きます。

3つ以上当てはまる場合、問題はツール連携の不足ではありません。「つなぐ前に何を設計すべきか」が抜けていることが本質です。

CRM統合が失敗する3つのパターン

  1. 「接続すること」がゴールになっている

    「SalesforceとHubSpotをつなぐ」「kintoneとAPIを連携する」が目的になると、設計が手段から始まります。本来の目的は「データを活用して意思決定を速くすること・工数を減らすこと」のはずです。つなぐことがゴールになった瞬間、「なぜつなぐか」が曖昧になり、つないでも誰も活用しないシステムが完成します。

    判断基準:統合の目的を「〇〇ができるようになるから、△△が改善する」という形で言えなければ、接続がゴールになっています。

  2. 正データ(Single Source of Truth)が定義されていない

    医療テック企業の事例では、「施設・医師・代理店」という医療業界特有の多対多の関係が複数システムに分散し、誰がどのデータを更新しているか把握できない状態でした。どのシステムを正とするかが決まらないまま統合を始めると、データが揃っても「どれが正か」という議論が続きます。統合の前提条件は、Single Source of Truthの定義です。

    判断基準:「顧客の正データはどのシステムですか」と5人に聞いたとき、全員が同じ答えを即答できなければ定義されていません。

  3. データフローではなく「ツールリスト」で設計している

    「Salesforce・HubSpot・kintone・Excel・会計システム」というツールの一覧から統合設計を始めると、ツール間の連携が「API接続できるかどうか」で判断されます。本来必要なのは「誰がどんな情報をいつどこで必要とするか」というデータフローの設計です。流れが先で、ツールはその後です。

    判断基準:統合の設計書がツール一覧から始まっていれば、データフローではなくツールリストで設計しています。

設計を変えた後に何が起きたか

前述の医療テック企業では、ツールを「つなぐ」ことから始めるのではなく、データフローと運用構造の再設計としてプロジェクトを推進しました。その結果、以下の変化が起きました。

  1. データ管理・抽出業務を約65%削減

    kintoneなど複数システムとのデータ連携を自動化し、「最新リストの作成」という手作業を排除しました。10箇所以上に分散していたデータが、HubSpotという単一基盤に集約されました。

  2. マーケティングチーム全体で月約100時間の工数を創出

    データ整備に費やしていた時間が戦略業務へシフトしました。キャンペーン設計やLTV向上施策など、本来注力すべき業務にリソースを使える状態になりました。

  3. 医療業界特有のデータ構造をHubSpot上で再現

    「施設・医師・代理店」という多対多の関係をHubSpot上に設計し、複雑な顧客構造を特定個人への属人化なく運用できる状態を構築しました。

ツールを変えたのではなく、「誰がどんなデータをいつ必要とするか」を設計し直しました。

今週から始められる3つのアクション

  1. 「最もよく使うデータ」を1つ特定し、正データがどこにあるか確認する

    顧客リスト・商談データ・行動履歴のうち、最も頻繁に参照するデータを1つ選びます。そのデータが今どのシステムに存在し、誰がどう更新しているかを書き出すだけで、分散の構造が見えてきます。

  2. データを使う人が「いつ・何のために」必要かを5人にヒアリングする

    ツールの仕様ではなく、「このデータを使って何を判断していますか」を現場に聞きます。この回答から、本当に必要なデータフローの設計が始まります。要件定義より先にやるべき作業です。

  3. 統合後に「何が65%削減・100時間創出と同等の変化か」を言語化する

    CRM統合の成功基準を「つながったかどうか」ではなく「工数がどう変わったか・意思決定がどう速くなったか」で定義します。この言語化があると、プロジェクトのスコープが収束しやすくなります。

まとめ:CRM統合は「設計の問題」

CRM統合プロジェクトが失敗する理由は、ツール連携の技術的な問題ではありません。「接続することがゴールになっていること」「正データが定義されていないこと」「ツールリストから設計を始めること」が構造的な原因です。

医療テック企業の事例が示すように、65%の工数削減・月100時間の創出を実現した背景には、ツールを変える前に「誰がどんなデータをいつ必要とするか」を設計する順序がありました。CRM統合が機能するかどうかは、ツールの組み合わせではなく、設計の質で決まります。

CRM統合の前に、データフローを設計する

ConsilegyはSalesforce・HubSpot・kintoneなどを横断しながら、データフローと運用構造の再設計から支援します。ツール選定の前に、正データの定義と活用目的の整理から始めましょう。

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