はじめに:どちらの数字が正しいのか

Salesforceでは今月の受注が「2.1億円」。HubSpotでは「1.8億円」。営業会議は、どちらを信じるかという確認から始まる——こんな状況が、実際の現場で起きています。

マーケティングがHubSpot、営業がSalesforce、集計はExcel、レポートはLooker Studioという構成になっている場合、この問題は特に起きやすくなります。

最初に確認しておきたいことがあります。この問題の原因は、SalesforceにもHubSpotにもありません。問題は、「どの数字を、何の定義で、どのシステムを正として扱うか」が設計されていないことにあります。


なぜSalesforceとHubSpotで数字がズレるのか

多くの企業では、SalesforceとHubSpotが別々の目的で導入されています。HubSpotはマーケティング・リード管理、Salesforceは営業・商談管理——この構成は自然です。しかし、問題はその後に起きます。

HubSpotは「マーケティング視点」でデータを構成します。フォーム送信、広告流入、MQL、メール開封、スコアリングといった情報が、リード単位で蓄積されます。一方Salesforceは「営業視点」の構造です。商談、案件金額、受注予測、パイプライン、営業活動が中心になります。

この2つのシステムが並走するとき、問題はツールの性能ではなく、定義と役割が設計されていないことから生まれます。

HubSpot
Marketing
MQL数 リード数 開封率 フォーム送信 スコア
「1.8億円」
数字ズレ
KPI定義の不一致 重複データ 同期タイミングのズレ
Salesforce
Sales
商談金額 受注数 パイプライン 営業活動 売上予測
「2.1億円」
2つのシステムが異なる「視点」で構成されている場合、定義がなければ同じ月の受注額すら食い違う

よくある「数字ズレ」の実例

数字がズレる原因は1つではありません。現場でよく見られるパターンは、次の4つです。

01

商談作成タイミングが違う

マーケティング側では「問い合わせが来た時点」を商談化とみなし、営業側では「初回商談が終わったら」を商談化とする。このズレが生じると、商談数・商談化率・SQL数がシステムごとに異なる値になります。どちらかが間違っているのではなく、タイミングの定義が揃っていないことが原因です。

02

同じ顧客が複数のシステムに存在する

HubSpotはメールアドレス基準で顧客を管理し、Salesforceは会社名基準で管理する。この違いから、同じ会社が複数登録され、名寄せされないままアカウントが重複する状態になります。これがARR・顧客数・LTVのズレとして表れます。

03

ステージ定義が違う

HubSpotでは「MQL」、Salesforceでは「SQL」という言葉を使っていても、何をMQLとするか、いつSQLへ移行するかの条件が曖昧なままになっているケースがあります。この状態では、営業は「リードの質が低い」と感じ、マーケティングは「営業が追っていない」と感じます。これはツール問題ではなく、定義設計の問題です。

04

更新タイミングが違う

HubSpotはリアルタイム更新、Salesforceは夜間バッチ同期——この組み合わせでは、ダッシュボード・KPI・売上予測が数時間から1日ズレます。現場ではこのズレの仕組みが共有されないまま、「数字がおかしい」という不信感だけが積み重なっていきます。


本当に必要なのは「Revenue Data Flow」の設計

SalesforceとHubSpotを両方使う企業に必要なのは、新しいツールではありません。必要なのは、Revenue Data Flow(収益データの流れ)の設計です。

Revenue Data Flowとは、どのデータがどこで発生し、どのシステムへ流れ、誰が更新し、何を正として扱うかを定義する考え方です。たとえば次のように整理します。

データ 正システム(Single Source of Truth)
リード情報HubSpot
商談情報Salesforce
契約・受注情報Salesforce
メール配信履歴HubSpot
売上予測Salesforce
マーケ施策分析HubSpot + BI

重要なのは、すべてを一つのツールに寄せることではありません。どのツールを、何の役割で使うかを明確にすることです。

Revenue Data Flow 各ステージの正システム
Lead
HubSpot
MQL
HubSpot
SQL
引き継ぎ
商談
Salesforce
受注
Salesforce
継続
BI / CS
どのステージをどのシステムが「正」として持つかを定義することが、数字ズレをなくす最初のステップ

「連携」だけでは解決しない

SalesforceとHubSpotを連携すれば解決する——そう考える企業は少なくありません。しかし実際には、項目定義・同期条件・ステージ定義・更新ルール・KPI定義が整理されていなければ、連携してもカオスが高速化するだけです。

連携の前に設計が必要です。システムをつなぐことは手段であり、「何を正とするか」「誰がどの定義で更新するか」を決めることが目的です。設計のない連携は、問題を隠すのではなく、増幅させます。


Revenue Architectureという考え方

ここで必要になるのが、Revenue Architecture(レベニューアーキテクチャ)です。Revenue Architectureとは、営業・マーケティング・カスタマーサクセス・CRM・KPI・データを、売上につながる一つの流れとして設計する考え方です。

SalesforceとHubSpotの問題も、実際にはツール問題ではありません。誰が、どの定義で、どのタイミングで、何を更新し、どのKPIを見るか——という「収益構造」の問題です。

海外のRevOps事例でSalesforce・HubSpot・BI・CDPを高度に連携している企業が多くありますが、日本企業では同じ構成を入れてもうまく定着しないケースが少なくありません。営業文化・Excel運用・稟議構造・会議運営が異なるためです。重要なのは、海外ツールを入れることではなく、自社で機能する構造へ翻訳することです。

Marketing Sales Customer Success
Revenue Architecture
収益構造設計
HubSpot Salesforce KPI定義 Data Flow 会議体
施策
商談
受注
継続収益
Revenue Architectureを設計することで、SalesforceとHubSpotの役割が明確になり、一気通貫のデータ管理が実現する

Revenue Architectureを整えると、何が変わるのか

01

数字ズレが減る

営業・マーケティング・CS・経営が同じ定義・同じデータソースを見るようになります。「どちらが正しいか」という確認が不要になり、会議の時間を改善議論に使えるようになります。

02

CRMが信頼される

「CRMの数字は信用できない」という声がなくなります。これは、ツールが変わるのではなく、数字を作る構造が変わるために起きることです。

03

施策と売上がつながる

どの施策が商談・受注・ARR・継続収益へつながったかを、一気通貫で見られるようになります。マーケティングの投資対効果が明確になり、予算配分の判断精度が上がります。

04

売上が予測できるようになる

パイプラインの精度が上がり、来月・来四半期の売上見込みを経営判断に使えるようになります。これは、CRMの使い方ではなく、設計の精度に依存する変化です。


Consilegyの考え方

Consilegyでは、Salesforce導入・HubSpot導入を単独のツール導入として捉えていません。重要なのは、データ構造・KPI定義・Revenue Data Flow・営業プロセス・マーケティング連携・RevOps運用を、一つの収益構造として設計することです。

Salesforce・HubSpot・Kintone・BI・Slackなどを横断しながら、Revenue Architectureとして再設計します。目的は、ツールを増やすことではなく、売上が見える構造を作ることです。

支援領域 内容
Architecture Revenue Data Flow設計・CRM / SFA構造再設計
Process 商談ステージ・KPI・ハンドオフ条件の定義
Operations 会議体設計・RevOps体制構築・定着支援
Technology HubSpot / Salesforce等の実装・改善

まとめ:数字ズレは、構造問題

SalesforceとHubSpotで数字がズレる原因は、ツール性能ではありません。多くの場合、KPI定義・データ構造・同期ルール・Revenue Data Flow・Revenue Architectureが設計されていないことが原因です。

「連携ツールを追加する」前に、「どのデータを、誰が、どの定義で扱うのか」を整理する必要があります。数字ズレをなくすには、まず構造から見直す必要があります。

Consilegyは、CRM導入ではなく、Revenue Architectureの観点から、営業・マーケティング・データ構造を横断して再設計します。SalesforceとHubSpotのどちらを使うかではなく、両者をどう機能させるかを、収益構造から設計します。